ボランティア同好会では、作家でイラストレーター(ACジャパンの広告デザインも手掛けていらっしゃいます)でもある小林エリカさんをお招きしました。2024年に第78回毎日出版文学賞を受賞された小説「女の子たち風船爆弾をつくる」についてお話を頂戴しました。


この作品には、1935(昭和10)年から戦後に至るまでの千代田区界隈に通う女学生たちの日常や知られざる歴史上のできごとが、膨大な資料と証言をもとに描かれています。女学生たちは陸軍登戸研究所で極秘に開発された風船爆弾作りに動員されていたのですが、当時何の目的で作っているのかを知らされていなかったのです。

風船爆弾とは、和紙をコンニャクのりで貼り合わせた直径約10メートルの気球に、爆弾をつけて飛ばすものです。1944年~45年春に約9300発が米国本土を狙って飛ばされ、偏西風に乗って1千発ほどが到達し、オレゴン州で民間人6人が死亡しました。戦後40年たってからその真相を知ることになった1人の元女学生が手記を残し、そこから少しずつ証言する人が現れ、資料が掘り起こされ、歴史上の事実として認知され始めました。

歴史の教科書では、政治・経済・文化の中枢にいた人々のことは語られていますが、その時代に生きた市井の人々の苦難の経験は語られるとがほとんどありません。戦時下で人々がどんな体験をしてきたのか、それらの記憶を次世代へ継承していくことが平和を構築する上でとても大切だと実感しました。

生徒たちは口々に「今まで知らなかった歴史上の出来事を知ることができた、もっと学んでいきたい」という感想を述べてくれました。今年は戦後80年。今回のお話で学んだことをもとに、登戸研究所の博物館にも足を運び、戦争と平和について考え、学園祭での展示に繋げていきたいと考えています。今日の担当は、ボランティア同好会顧問の横関でした。


