9月21日(水)『校長だより』第22号

【16年連続 今年も日本人が「イグ・ノーベル賞」を受賞
新聞の社会面でこんな記事を見かけました。

2022年のイグ・ノーベル賞が発表され、千葉工業大学の松崎 元教授らの研究グループが、「人間がツマミやノブを回す際、最も効率的な指の使い方の研究」が受賞したとのこと。

普段、我々はフタの開け方やその時の指の使い方なんて特に意識していませんよね。

実験としては、ゼリー飲料、ペットボトル、ウェットティッシュのそれぞれのフタを何本の指で開けるかという内容で、直径1㎝未満の場合は指を2本使い、9㎝を超えるとほとんどの人が5本の指を使うという調査結果をまとめたもの。何気ないデータに思えますが、人間の手は操作する対象に対して無意識のうちに投入する指を調節していることを示し、同様の無意識による指数の調整は回転動作以外にも、日常生活の様々な場面に存在すると考えられるそうです。

松崎教授は日用品などをデザインされていて「この結果は、つまみの大きさや形状をデザインする際に役立つと思う、『デザイナー』としては大変嬉しく思います」と述べていました。

ところで、「イグ・ノーベル賞」って聞いたことありますか? 「ノーベル賞」なら知っているけど・・・イグ・ノーベル賞とは、「Ig Nobel」と書き、ノーベル賞の「Nobel」に否定の接頭語の「Ig」が付き、「裏ノーベル賞」とも呼ばれています。さらに英単語で「イグノーブル」は、「不名誉な」や「品がない」などという意味があるそうです。ですので「ノーベル賞」とイグノーブル「不名誉な」という意味などがかかっている名称です。アメリカの科学雑誌が「人を笑わせ、そして考えさせる研究」を表彰するとして1991年に創設し、ノーベル賞をパロディー化した名前でもあるわけです。

毎年10本程度が表彰されているそうです。受賞例をいくつか紹介しましょう。

研究内容
応用心臓学ロマンチックな出会いがあり、互いに惹かれていると感じているとき、心拍数はシンクロするという証拠の発見
物理学子ガモが編隊を組んで泳ぐ方法
動力学歩きスマホが周りの歩行者の通行に与える影響
医学教育大腸の内視鏡挿入を容易にするため、内視鏡を自ら大腸に挿入する方法
平和カラオケを発明し、人々が互いに寛容になる新しい手段を提供した業績
栄養学34年間自分の食事を撮影し、食べた物が脳の働きや体調に与える影響の分析
物理学床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだ時の摩擦係数の計測

くすっと笑える内容、一瞬?と思わせるもの、何のためにやったの? などなど。「変わった行動をすることは悪いことと思われ、変わった人が1人いると隣近所は快く思わないかもしれません。でも、意志や信念をもって行動する『変わった人』に憧れる一面も我々にはあるのでしょう。」とイグ・ノーベル賞の創設者は語っています。

同調圧力という言葉があります。なんとなく皆と同じ行動・考え方をしないと周囲から浮いてしまうのではないかという不安。「KY」と思われたくない。でも、一人一人の個性を大事にする姿勢をもち、それを認める組織であってほしいと思います。

「イグ・ノーベル賞の研究は一見すると役に立たない」というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、日本人のチームが開発した「わさび火災警報器(2011・化学賞)」や「涙の出ない玉ねぎ(2013・化学賞)」は商品化され、社会に貢献しているケースもあります。「笑えて、考えさせられる」イグ・ノーベル賞は多くの人にとって難しく関係が薄いと考えられがちな「研究」や「科学」を身近なものにしているとも言えます。

イグ・ノーベル賞への理解を通して、独創的な考えを尊重するとともに皆さんの科学や研究への興味につながればよいですね。

写真は、玄関脇の「むくげ」