6月19日(日)「校長だより」第10号

【視点を変えてみよう!】

図書室の前に掲示されている「図書館教育ニュース」に目がとまりました。ちょっと見慣れぬ逆さまの地図です。日頃、我々が目にする日本地図とは配置が違いますね。 日本列島は大陸から切り離された島国というイメージが強いと思いますが、この地図を見ると、日本列島が日本海という大きな湖をかこんで、ユーラシア大陸、朝鮮半島とつながる、環(わ)の一部のように見えてきませんか? そうです、日本は環の一部なのです。このように日本海をかこんで環のようにつながる地域を、「環日本海(かんにほんかい)地域」とよんでいます。通称「逆さ地図」の正式な名前は「環日本海諸国図」といい、元は富山県が作成したものです。

当たり前の話ですが、世界各国、国によって「世界地図」は違います。日本だと、当然、地図のど真ん中に日本が位置する世界地図です。小学校のころから見慣れている日本の世界地図は、日本が真ん中、向かって左(つまり西側)に中国ほか、アジア大陸。太平洋を挟んで向かって右(つまり東側)にアメリカ大陸があります。ど真ん中に太平洋が位置し、世界各国の位置を知るにはちょっと分かり辛いかもしれませんね。

ヨーロッパを中心とした場合、経度0度に位置するイギリスのグリニッジがほぼ中心に描かれることになり、当然、日本は地図の右端、最も東側、つまり極東(「Far East」、「日出ずる処」)の国となるわけです。 今回のように、地図をひっくり返してみると、ロシアや中国、北朝鮮、韓国などが太平洋に出るにはあまり好条件とは言えない現実が見えてきます。この位置がもつ意味について、地理的環境から、国家間の関係を分析したり、外交や軍事戦略の理解に生かしたりする学問を「地政学」といいます。興味をもってもらえたでしょうか? ロシアとウクライナが紛争状態に入って3か月以上が経ちますが、今一度地図を眺めてみてください。地政学から見ると、ロシアの意図が見えてくるでしょう。

地図に限らず、物事を違った視点から見てみると新たな気づきが生まれます。一方的な見方ではなく、他面的に物事をとらえたいものです。 人と人との関係で考えるならば、「こんなことを言ったら、こんなことをしたら、相手はどう思うだろう?」と相手の立場に立って考えてみることなのでしょうね。ちょっとした配慮や気遣いで円滑な人間関係を築いていけるものです。「仁愛」=思いやりや情けをもって人を愛することに通じます。

ちなみに国連の旗に使用された紋章は、特定の国を特別扱いすることのないように、本初子午線(0度経線)と180度経線が地図の中央になるようにデザインされています。